WAZAO-IPPONメンバーが日本の釣り文化を勉強する中で読破した本の中から、特にオススメしたい名著をお届けするシリーズ記事。前回に引き続き、和竿の世界を知る上では絶対に外せない「葛島和竿3部作」より、次男こと「続・平成の竹竿職人/葛島一美(2007 つり人社)」をご紹介。
焼き印だけが、竿のルーツを証明する手掛かりになる
前作「平成の竹竿職人」から5年後に発刊された本書。前回同様に職人ごとの紹介ページが並ぶが、今作は職人の焼き印にそのフォーカスが当たっている。
現代の生活の中で、和竿やその焼き印を直接見ることは少ない。しかし、もし街角や店頭、あるいは古い家の中で和竿に出会ったとき、そこに焼き印があれば、どんな作品なのかを特定する手がかりとなる。その時のために、焼印を中心とした竿師の物語を残しておくこと。それこそが本書における筆者の狙いだったのではないかと推察する。
前作から本作を出す5年間は、竿師が数多く引退する時期であったと考えられる。そして今では数えられるほどになった。だが、残った焼き印と本書があれば、和竿は材質や機能を超え、かろうじてその背景を語り始めることができる!
ほぼ焼き印の写真だけで埋め尽くされている本書だが、未来の和竿キッズにはこれほど頼もしい書籍は数多くない。この本のおかげで、この世界の片隅に眠っている和竿を”見つけだす”ことができる。その意味において、本書は数少ない和竿の実践書だといえよう。
同じ竿師でも、時代や世代によって焼き印が異なることがわかる。前回よりも文字数が多く、濃い。筆者の記述せんという溢れる熱意を感じざるを得ない。
竿師の「縦の繋がり」に想いを馳せる
本作に掲載されている写真は焼き印がメインである。竿の写真は少ない。ひょっとすると、とっつきにくさを感じるかもしれない。しかし、実は前回以上に各竿師の人間模様がありありと描かれているように感じられる。心なしか竿師のポートレートも、前作よりも距離感が近い印象を受ける。
前作は同時代の職人の物語が中心だったが、今作では焼き印を通じて、先代やさらにその先代にも話が及ぶ。つまり、前作は竿師たちの現在の関係やつながりを示す横の糸として、今作は竿師の歴史や背景、系譜を追う縦の糸として理解することができる。この二つの作品を合わせることで、竿師たちの豊かな個性や背景がより鮮明に描き出されるのだ。
結局は我々は両者を事あるごとに読み続けていくことになるであろう。
今作もつり人社社長(当時)の鈴木康友氏のコラムが魅力的だ。
焼印を作っていたお店へのインタビューも掲載されている。焼印の発注マニュアルはおそらくここにしかない。